リチウムイオン電池とは何か?その利点と欠点は?

皆さんこんにちは! 管理人のマッド石村と申します!

みなさん、リチウムイオン電池(Li-ion battery)って聞いたことありますか?

電子機器

実は、私たちの身の回りにはリチウムイオン電池でいっぱいです!

リチウムイオン電池とは、充放電により繰り返し使用ができるため、電池の中でも二次電池と呼ばれる分類に属します。

一方、充電ができず一度きりしか使えない電池は一次電池と呼ばれます。一般的な乾電池やボタン電池などがこれです。

スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、ノートパソコンのような小型機器だけでなく、今では電動スクーターや電気自動車にも用いられるリチウムイオン電池……もはや私たちの生活はリチウムイオン電池なしでは成り立たちません!

ここで、電池工業会の統計として公開されている「二次電池販売金額長期推移」より、1986年から現在までの二次電池の販売金額の推移を見てみましょう。

二次電池販売金額の国内推移
日本国内における二次電池販売金額の推移(電池工業会統計より, 筆者作成)

リチウムイオン電池は1990年代初頭辺りから市場に現れ始め、従来から使われていたニッケルカドミウム電池(Ni-Cd)やニッケル水素電池(Ni-MH)をあっという間に追い抜き、瞬く間に二次電池総販売数の半分を占めるまで急成長しています!

なぜ、リチウムイオン電池はこれほどの短期間で二次電池市場を席巻したのでしょうか?

この記事では、他の二次電池と比較して、リチウムイオン電池とは何か? そのしくみ、メリットとデメリットをご紹介していきます!

目次

リチウムイオン電池とは何か?

リチウムイオン電池とはその名の通り、リチウムイオンによって動作する二次電池です!

電池の基本的な構造は正極(+)/電解液/負極(-)の三層構造となります。この正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電と放電を行う二次電池が、リチウムイオン電池と呼ばれています。

一般的には、正極にはLiCoO2のような遷移金属酸化物が、負極には炭素材料が用いられることが多いようです!

リチウムイオン電池の放電動作
一般的なリチウムイオン電池の放電動作の模式図(筆者作成)

なぜリチウム「イオン」電池と呼ばれるのか?

ここで、電池にある程度詳しい方は、なぜわざわぜ「イオン」とつけるのか不思議に思うかもしれません。

電池である以上、イオンがはたらくのは当然ではないでしょうか?

実は、なんとリチウムイオン電池が生まれる以前に、金属リチウムを負極に用いた(金属)リチウム電池が存在していたのです!

1985年にモリセル社によって販売されたこの二次電池は、負極に金属リチウム、正極に二硫化モリブデンを用いていました。(参考文献)

この電池は、当時の他の二次電池と比較しても高い性能を有していましたが、充放電に伴う発熱・発火の問題により、1989年には全品回収されてしまいました!

炎

このように、リチウムを用いた電池はたくさんのエネルギーを蓄えられる一方で、高い反応性による安全性の懸念という問題を抱えています。

特にリチウム金属には高い反応性があり、水や空気と触れると発火してしまうため、これを電極として使いこなすことは2019年現在でも困難です!

そこで、リチウムが金属として析出することなく動作する負極(炭素系材料)を用いることで、充放電を通じて金属リチウムが一切電極に生じない電池が開発されました。

この二次電池が、のちにリチウムイオン電池と呼ばれるようになります!

つまり、リチウムイオン電池にわざわざ「イオン」とつける理由は、それよりも前に開発され安全性の問題が表出したリチウム(金属)電池とは別物であることをあえて区別するためだったのです!

リチウムイオン電池のメリットは? 他の二次電池と比較!

リチウムイオン電池の特徴は、主に以下の2つです!

  1. 高い動作電圧
  2. 高いエネルギー密度

それでは、この特徴を、現在他に二次電池として用いられている鉛蓄電池、ニッケル水素電池と比較して1つずつ説明していきます!

1. 高い動作電圧

リチウムイオン電池と鉛蓄電池、ニッケル水素電池の動作電圧の目安は以下のようになります!

リチウムイオン電池鉛蓄電池ニッケル水素電池
動作電圧3.7 V2 V1.2V

リチウムイオン電池は非常に高い動作電圧を有していることが分かりますね!

雷

これは、リチウムが鉛や水素と比較して還元性が高く、負極として用いた場合の電位が非常に低くなるためです。電池の動作電圧は正極の電位と負極の電位との差になるため、リチウムイオン電池は非常に高い電圧で動作します!

2. 高いエネルギー密度

「エネルギー密度」は皆さん聞き覚えがないと思うので、簡単に説明します!

エネルギー密度とは名前の通り、電池にどれだけたくさんのエネルギーをためておくことができるかを示す指標であり、この値が高いほど性能が高い電池であるといえます!

リチウムイオン電池鉛蓄電池ニッケル水素電池
エネルギー密度100-243 Wh/kg30-40 Wh/kg60-120 Wh/kg

以上のように、リチウムイオン電池は非常に高いエネルギー密度を持っています!

これは高い動作電圧を有することに加え、リチウムが最も軽い金属であることが関係しています。

なぜリチウムイオン電池のエネルギー密度は高いのか?

リチウムは放電時に負極から一価のイオン(Li+)として放出され、この時解き放たれた電子が電流として取り出されます。

この時、負極で電子を放出する物質は専門用語で負極活物質と呼ばれ、その重さが電池のエネルギー密度に大きく関係するのです!

シーソー

具体的には、活物質の質量が小さいほど、単位重さ(1kg)あたりの蓄積電荷量(Ah)は増大します。そして、これに電池の動作電圧を掛けたものがエネルギー密度(Wh(=Ah×V)/kg)となります!

リチウムは金属の中で最も質量が小さいうえ、前述の通り、負極として非常に低い電位を有し、結果として動作電圧が高くなるために、二次電池として非常に高いエネルギー密度が達成できるのです。

リチウムイオン電池のデメリットは? 

ここまでで終わればリチウムイオン電池は完全無欠。いいことだらけの最高の二次電池のように思えますが、もちろんデメリットもあります! それも重大な。

具体的には、以下の2つとなります!

  1. 安全性が低い
  2. 値段が高い

1. 安全性が低い

リチウムイオン二次電池は他の電池と比較して非常に大きなエネルギー密度を有しています。

つまり、そのエネルギーが制御不能になった場合、リチウムイオン電池はまるで爆弾のように、非常に危険な存在となってしまいます。

飛行機の預け荷物へリチウムイオン電池を入れることが禁止されているのはこのためです。手荷物ならすぐに対処できますが、預け荷物だと出荷に気づかず、周りに延焼して大変なことになってしまいます。

実際に、2010年のUPS航空6便事故では預け荷物中のリチウムイオン電池の発火が原因で墜落してしまっています。2013年にはボーイング787に電源として搭載されていたリチウムイオン電池の熱暴走による出火、2016年にはリチウムイオン電池を搭載したサムスン製スマートフォンGalaxy Note 7が相次ぎ爆発事故を起こし、2019年には上海でTesla製の最新電気自動車Model Sが大爆発、などなど……

上海のEV工場で爆発するTesla Model S

このように、実用化から四半世紀以上たった今でさえ、リチウムイオン電池の安全性には大きな懸念が残っています。

その原因として、高いエネルギー密度のほかに、リチウムイオン電池は電解液に「有機電解液」を用いていることが挙げられます。

鉛電池やニッケル水素電池の電解液には、イオンの溶解性が高く、安価で安全な水が用いられます。しかし、リチウムイオン電池は高い電池電圧を有するため、水系の電解液は負極上で水素に分解してしまうのです!

そのため、動作中に分解しない電解液として有機物が用いられるのですが、これはいわば油のようなもので、揮発性が高く可燃性です! つまり、リチウムイオン電池はそれ自体が非常に燃えやすい物質なのです!

こんな電池が制御不能になってしまったら? どうなるかはそれこそ火を見るよりも明らかですね。

2. 値段が高い

すでにかなりの問題が明らかになったような気がしますが。リチウムイオン電池にはまだまだ問題はあります。

ずばり、値段です!

鉱山

リチウムイオン電池の正極にはニッケル、コバルト、マンガンといった希少金属が用いられています。特にコバルトは供給不足の懸念から、2018年の3月から5月にかけて90000USドル/トンを超える暴騰を見せています。(参考文献)

また、コバルト鉱石の埋蔵量の50%以上はコンゴ及びザンビアのカッパーベルトに、リチウムの総埋蔵量の60%はチリの塩湖に存在する(参考文献)など、そもそもの資源の偏在性による材料供給の不安定も懸念されています。

スマートフォンやノートパソコンなど、小型機器に用いる程度の量であれば大丈夫かもしれませんが、電気自動車のように大量の電池を必要とする場合、高いコストと不安定な供給は大きな問題です!

電気自動車

2019年になってもいまだに電気自動車が私たち庶民の手に届かないところにあるのは、これが理由と考えてよいのではないでしょうか?

日本政府は未来投資戦略2017で定めるところによると、 現在電気自動車の割合が1%にも満たないところを、2030年には20~30%にすることを目標として掲げているようです。

この目標を達成するためには、大量生産による製造コストの低下だけではなく、電極材料の見直し、あるいはレアメタルを使わない新規電極材料の開発による材料コストの低減も不可欠でしょう。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、 身近なようでなかなか知らないリチウムイオン電池の仕組みと、メリット、デメリットを簡単に紹介しました!

リチウムイオン電池の需要はこれからもどんどん高まることが予想されます。

今後も目が離せませんね!

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!

マッド石村